怒りを消さなくていい、と言ってくれる天使。
その火をどこへ向けるかを、
いっしょに決めてくれます。
カマエルは、正しさのために立つ天使です。名は「神を見る者」「神を求める者」という意味を持ちます。
ミカエルやガブリエルほど名を知られてはいませんが、七大天使のひとりに数えられてきました。五、六世紀の古い書物にもその名は記されています。カバラでは生命の樹の第五のセフィラ、「峻厳」と呼ばれる場所を司ります。厳しさの座です。
力天使の長として、一万二千の軍勢を率いると伝えられます。赤い衣の上に緑の鎧と兜をつけ、大きな緑の翼を持つ姿で語られてきました。火星を司り、火曜日を守ります。
こう並べると、こわい天使のように思われるかもしれません。実際、破壊の天使と呼ばれることもあります。けれどこの天使が本当に扱っているのは、厳しさです。厳しさは、大切なものがあるところにしか生まれません。
峻厳の座に置かれた徳は、勇気です。
同じ座に置かれた悪徳は、残酷さです。
その二つを分けているのは、意図だけです。
カマエルの姿には、赤と緑という、ふつうなら並ばない二色が使われます。ここにこの天使の性質が出ています。
赤い衣
火星の色であり、血の色です。生きている者にしかない熱をあらわします。この天使が来るのは、まだ熱を持っている人のところです。
緑の鎧
赤い熱を、緑の器が包んでいます。火は、器があってはじめて役に立ちます。鎧は守るためのものであり、同時に、自分の火を収めておくためのものです。
炎の剣
園の門を守った、燃える剣を携える天使とも伝えられます。境界を示すための剣です。ここから先、と告げるための一本です。
緑の翼
大きく広げられた緑の翼。戦う天使でありながら、その翼は草木の色をしています。この天使が守っているのが、生きているものだからです。
カマエルには、あまり語られない話があります。
オリーブの園で、これから起こることを知りながら、ひとりの人が夜通し苦しんでいました。逃げることもできた。けれど、行かなければならなかった。その傍らに、名を記されないまま、慰めに来た天使がいたと伝えられています。この天使をカマエルだとする伝えがあります。
ここが大事なところです。この天使が渡したのは、こわさを消す力ではありませんでした。震えている人のそばに座り、それでも立ち上がれるだけの力を渡して、去りました。
カマエルが与えるのは、こわいまま前に進むための、脚の力です。だからこの天使は、逃げられない人のところに来ます。
怒りは手放しましょう、と言われることがあります。カマエルは、そうは言いません。
怒りが湧くのは、そこに守りたいものがあるからです。どうでもいいことに人は怒れません。理不尽なことをされて腹が立つのは、自分にはそうされない値打ちがあると、心のどこかが知っているからです。怒りは、あなたの中の正しさが立ち上がった音です。
問題は、その火をどこへ向けるかだけです。他人に向ければ争いになり、自分に向ければ体を壊します。けれど状況に向ければ、それは動く力になります。
火を移し替える
怒りが湧いたとき、その場で誰かにぶつけるかわりに、こうしてみてください。まず、怒っていることを自分に認めます。次に、静かな場所へ行き、紙に書きます。何に腹が立ったのか、それはなぜか。そして最後にひとつだけ書き足します。「では、どうしたいのか」と。
この最後の一行に移った瞬間、火は材料になります。カマエルの仕事は、ここです。怒りの行き先を変えること。
カマエルは、あなたが立たなければならないときの天使です。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。この天使には、飾らない言葉のほうが届きます。
言わなければならないことがあるときに
こわいけれど行くときに
自分を守りたいときに
伝えたあとは、手放します。
終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
ミカエルがつながりを断つ天使なら、カマエルは線を引く天使です。関係を切らずに、ここから先には入らせない、と決めるためのものです。家族や職場のように、離れられない相手にこそ向いています。
やり方
静かな場所に立つか、座ります。自分を中心にして、床に円が描かれているところを思い浮かべてください。手を伸ばして届くくらいの大きさで十分です。円の縁が、細い赤い線で光っています。そして名を三度呼び、こう伝えます。
最後の一行が大事なところです。守るための線は、同時に、自分が誰かの領分を踏まない約束でもあります。両方そろって、この天使は動きます。
朝、家を出る前に行うと一日もちます。
苦手な人と会う直前でもかまいません。歩きながら心の中で唱えても届きます。
線があるから、安心して人を招き入れられます。
この天使のしるしは、はっきりしています。
みぞおちが熱くなる
胸の下あたりが、内側から熱を持つことがあります。力が戻ってきているしるしです。怒りと似ていますが、こちらは澄んでいます。
赤が目につく
赤い車、赤い服、赤い花。その日だけ、赤ばかりが視界に入ることがあります。火星の色が呼んでいます。
言葉が先に出る
言おうか迷っていたことが、考えるより先に口から出る。あとで振り返ると、それが正しかった。カマエルの押し方です。
我慢が急にできなくなる
今まで飲み込めていたことが、突然飲み込めなくなる。もう我慢しなくていい時期に入ったということです。
辛いものが食べたくなる
生姜、唐辛子、胡椒。火のものを体が求める時期は、内側の火を起こしにかかっています。
体を動かしたくなる
じっとしていられない、歩きたい、走りたい。溜まった力が出口を探しています。使ってしまってください。
カマエルは火星を司り、火のエレメントに属します。金属は鉄。数は五。いずれも、鍛えられて形になるもの、打たれて強くなるものに結びついています。
火曜の朝に
火曜は、決める日です。先延ばしにしていることをひとつだけ選んで、その日のうちに片づけてください。連絡ひとつ、断りの一言、それで十分です。小さくても、決めたという事実が身体に残ります。
赤い蝋燭を、南に
カマエルと呼吸を合わせたいときは、赤い蝋燭を一本灯します。方角は南。炎を見つめながら名を呼び、いま向き合わなければならないことを、ひとつだけ口に出します。決めたら消して、動いてください。この天使は、動き出した瞬間に来ます。
鉄を握る
火星の金属は鉄です。石が手元になければ、鉄のもの——鍵、釘、古い道具——を握るだけでもかまいません。冷たく重いものを手に持つと、気持ちが散らばりにくくなります。
牡羊座・蠍座に生まれた方へ
この二つの星座は火星に守られており、カマエルとの縁が深いと伝えられています。牡羊座は前へ出る火、蠍座は深く沈む火。どちらも、大きな熱を抱えて生まれた方たちです。使い道に迷ったとき、この天使の名を呼んでみてください。
カマエルが立つのは、ゲブラー。
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カマエルに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
ガーネット
深い赤の石。カマエルにもっとも近いとされます。大事な話し合いの日に身につけてください。石榴の実に似た色で、身の内から力が湧く感じを支えます。
交渉・話し合いの日にルビー
王の石と呼ばれてきました。自分を安く扱ってしまう癖のある方に。小さなものでかまいません。値打ちを思い出すための石です。
自信が要る日にレッドジャスパー
落ち着いた赤茶の石。ガーネットやルビーが火をつける石なら、こちらは火を持続させる石です。長い戦いの時期に、鞄の底へ入れておいてください。
長期戦のお守りにブラッドストーン
緑の地に赤い斑が散る石。カマエルの緑の鎧と赤い衣、そのままの配色です。この天使に一枚だけ選ぶなら、これがよいでしょう。勇気が要る日に、左のポケットへ。
緑と赤、この天使の色カーネリアン
橙がかった赤。行動を後押しする石です。やろうと思って何日も動けていないことがあるとき、机の見える場所に置いてください。
先延ばしを崩すオニキス
古い書物でカマエルの石とされてきた黒石。境界線を引く祈りのときに、円の内側に置きます。感情が波立ちすぎる日を、静かに支えます。
境界線の祈りにハーブと香り
ネトル
触れれば刺す草でありながら、乾かせば体を養う草になります。カマエルそのものの植物です。お茶にすると、鉄分を含む滋味が体に落ちます。生の葉を摘むときは手袋で。
乾かしてお茶に / 生葉は手袋でジンジャー
体を内から温める根。決断の日の朝に、すりおろして白湯に落とします。手足が冷えていると、人は前に出られません。まず温めてください。※精油は皮膚への刺激が強いので、肌につけるならごく薄く。
決断の日の朝にタイム
古くから勇気の草とされてきました。戦に出る者に贈られた葉です。話し合いの前に一枝、ポケットに入れておく。あるいは前夜の食卓に加えておく。※枝を飾るのは大丈夫ですが、飲む場合と精油には注意が必要です。
前夜の食卓に / 一枝を携えるブラックペッパー
火星の香辛料。気持ちが萎えているとき、ひと振りで空気が変わります。香りを立てるなら、温かいお湯に挽きたてを落としてください。※刺激が強いため、妊娠中・授乳中の方や乳幼児、呼吸器(気管支等)がデリケートな方はご使用をお控えください。
温かいお湯に挽きたてをレッドローズ
赤い薔薇には棘があります。美しさと防御がひとつの枝に同居している、この天使らしい花です。あなたの強さをもてあますときに、一輪飾ってください。
強さをもてあます日に体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
サマエルと同じだと書いてある本もあります。
これも意見が分かれるところです。どちらも火星に結びつけられるため混同されてきました。ただ、カマエルの名は「神を見る者」、サマエルの名は「神の峻厳」「神の毒」と訳され、意味が異なります。別の存在として受け取る立場が有力です。
破壊の天使と書かれていて、こわくなりました。
その呼び名は、この天使が率いる軍勢に由来します。守るべきものがあるときにだけ厳しくなる天使です。あなたが呼びかけて害を受けることはありません。
怒っているときに祈ってもよいのでしょうか。
この天使は、怒りを持ったまま来てよい数少ない天使です。整えてから来なくてかまいません。その火をどう使うかを訊いてください。
我慢することが優しさだと教わってきた方へ。
あなたの中の怒りには、使い道があることを、
この天使は知っています。
名を呼んでみてください。その火を、前へ向けてくれるでしょう。