剣を携えて、いちばん前に立つ天使。
こわいとき、名を呼ぶだけでいいのです。
いちばん最初に駆けつけてくれます。
ミカエルは、天の軍勢を率いる天使です。名は「神のごとき者は誰か」という問いの形をしています。
この名が問いかけであることには意味があります。誰も神には及ばない。だからこそ、その前に立って守る者が要る。ミカエルは強さを誇らず、ただ引き受ける天使です。
『ヨハネの黙示録』では、天の軍勢を率いて竜と戦い、これを退けたと記されています。ユダヤ教にもキリスト教にもイスラム教にも、この天使の名は残りました。人が本気でこわいと思ったとき、どの土地でも呼ばれてきた名前だということです。
オルレアンの少女ジャンヌ・ダルクに声を届けたのも、この天使だと伝えられています。フランスの海に浮かぶモン・サン=ミッシェルは、その名のとおり「聖ミカエルの山」です。ヨーロッパの高い場所には、いまもミカエルの名を戴く聖堂が点々と残っています。高いところ、風の通るところ、遠くまで見渡せるところ。この天使は、そういう場所を好みます。
世界でいちばん多い名前のひとつ
この天使の名は、土地ごとに音を変えて広まりました。英語ではマイケル、フランス語ではミシェル、イタリア語ではミケーレ、スペイン語ではミゲル、ロシア語ではミハイル。マイケル・ジャクソンも、ミケランジェロも、この名前です。ミケランジェロにいたっては、ミケーレとアンジェロが合わさって「ミカエル天使」そのものになっています。
自分の子にこの名をつける人が、それだけいるということです。
ガブリエルがひとことで世界を変える天使なら、
ミカエルは、あなたの前に立って風を受ける天使です。
ミカエルの絵には、いつも決まったものが添えられています。手にしているものを見れば、この天使が何をする者なのかがわかります。
剣
断つためのものです。あなたを縛っているもの、もう必要のなくなったつながりを、必要な場所でだけ切ります。
天秤
量るためのものです。どれだけ正しく生きたかを、えこひいきなしに量ります。強い天使が同時に公平でもあるという、そのしるしです。
鎧
前に立つ者の装いです。ミカエルはいつも、守る相手より前を歩きます。あなたが受けるはずだった風を、代わりに受けています。
足もとの竜
退けられたもの。そこに留めています。悪をなくすのではなく、動かないように押さえておく。それがこの天使のやり方です。
ミカエルの色をたずねると、青と答える人と、金と答える人がいます。どちらも正しく伝えられてきた色です。役割が違います。
青 ── 守りの光
深く濃い、夜明け前の空のような青。ミカエルが差し出す守りの光の色です。こわいとき、目を閉じて、頭の上から青いマントがかけられるところを思い浮かべてください。足もとまで包まれたら、それでもう守られています。人混みに入る前、苦手な人に会う前、この青をまとっていくとよいでしょう。
金 ── 力を取り戻す光
太陽の色です。ミカエルは太陽を司る天使なので、こちらが本来の色だとも言えます。自分に自信がなくなったとき、声が小さくなってしまったとき、胸のまんなかに小さな金の光が灯るところを思い浮かべます。守られるための青に対して、こちらは立ち上がるための金です。
守ってほしい日は青を、力が要る日は金を。その日の自分に必要なほうを選んでください。
ミカエルは、あなたと、あなたを削るもののあいだに立つ天使です。緊急のときほど、この天使の領分です。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。声に出しても、心の中でもかまいません。緊急のときは、名前だけでも届きます。
こわいときに
決められないときに
場を清めたいときに
伝えたあとは、手放します。
終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
人と人のあいだには、目に見えないつながりができます。多くはあたたかいものですが、なかにはこちらの力を吸い上げていくものもあります。思い出すたび胸が重くなる相手、もう会っていないのに頭から離れない人。そのつながりを、ミカエルの剣にお願いして断ちます。
やり方
静かな場所で座り、目を閉じます。その相手を思い浮かべ、自分とその人のあいだに一本の線があるところを見ます。線の色や太さは、見えたままでかまいません。そして名を三度呼び、こう伝えます。
線が切れるところを見届けたら、切り口に青い光が当たるところを思い浮かべます。最後に、その人に向けて心の中で一礼して終わります。
これは、あなたが自分を取り戻すための祈りです。
落ち着いた日に、静かな心で行ってください。
一度で終わらないこともあります。何度でも、必要なだけ繰り返して大丈夫です。
ミカエルはいつも、あなたが気づける形でしるしを置いていきます。
視界をよぎる青い光
目の隅を、濃い青の閃きが通ることがあります。ミカエルの光の色です。まばたきをして消えても、確かに来ています。
背中や肩があたたかい
後ろから手を当てられているような熱を感じることがあります。前に立つ天使が、いま背中側に回っています。
守る人の姿が目に入る
警察官、消防車、救急車。その日に限って何度も見かけるときは、守っているというしるしだと伝えられています。
急に恐れが軽くなる
状況は何も変わっていないのに、こわさだけがすっと引くことがあります。引き受けてもらったあとの感覚です。
危ないところで助かる
あと一歩で、というところで何かが止まる。理由のわからない立ち止まりに救われたときは、この天使が働いています。
はっきりした一言が浮かぶ
迷っているとき、短くきっぱりした言葉が心に降りてくることがあります。やめなさい、行きなさい、と。ミカエルの言葉はシンプルです。
ミカエルは太陽を司り、火のエレメントに属します。方角は南、季節は夏、曜日は日曜。いずれも、照らすもの、燃やすもの、隠れたものを明るみに出すものに結びついています。
日曜の朝に
一週間の終わりであり、始まりでもある日です。朝の光が入る場所に立って、今週引きずってきたものを手放します。声に出さなくてかまいません。日の光に当たるだけで、多くのものは薄くなります。窓を開けて空気を入れ替えると、なおよいでしょう。
南を向いて、火を灯す
ミカエルと呼吸を合わせたいときは、南の方角を向いて座ります。金色か白の蝋燭を一本灯してください。炎を見つめながら名を呼びます。灯すあいだは五分で十分です。消すときは吹き消さず、そっと蓋をするか、指で摘んで止めます。
九月二十九日 ── ミカエルの日
秋分を過ぎたこの日は、古くからミカエルの祝日とされてきました。収穫を終え、暗い季節へ入っていく境目の日です。この日に一年の守りへの感謝を伝え、これから来る冬の守りを願う。そういう習わしが、ヨーロッパの各地に残っています。
火の星座に生まれた方へ
牡羊座、獅子座、射手座。この三つの星座は、古くからミカエルの守護のもとにあると伝えられてきました。前に出る力を持っている代わりに、消耗も早い。走り続けて息が上がった日に、この天使の名を呼んでみてください。
ミカエルが立つのは、樹のまんなか、ティファレト。
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ミカエルに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
スギライト
濃い紫の石。ミカエルにもっとも近いとされます。人の多い場所へ出る日に持ってください。ポケットでも鞄でもかまいません。帰ったら流水で洗い、乾かしてから休ませます。
外出の日に携えるラピスラズリ
金の粒を含む、夜空のような青。青い光を思い浮かべる瞑想のとき、右手に握ります。差し出す側の手です。強い石なので、元気な日に持つようにしましょう。
瞑想のとき右手にアメジスト
紫水晶。眠りを守る石です。悪い夢が続く時期、枕元に置いてください。日光に長く当てると色が褪せるので、休ませるときは月の光か、暗い場所で。
枕元へ / 直射日光を避けるアンバー(琥珀)
樹脂が長い時間をかけて石になったもの。太陽のかけらと呼ばれます。金の光を思い浮かべる日に。握っているとすぐ体温になじみます。
力が要る日に握るクリアクォーツ(水晶)
何にでも添えられる石。他の石の力を引き立てます。部屋の四隅に小さなものを置くと、場が整います。ひとつしかないときは、玄関に。
部屋の四隅か玄関にハーブと香り
アンジェリカ
名前そのものが天使に由来する草です。とりわけミカエルに捧げられてきました。乾かした根をひとかけら、小さな袋に入れて持ち歩きます。玄関に吊るしておくのも古いやり方です。
お守り袋に / 玄関に吊るすセントジョーンズワート
夏至の頃に黄色い花をつける、太陽の草。戸口に吊るして守りとする習わしが長く伝わっています。乾かした枝を束ねて窓辺に。※飲むお茶にする場合は、お薬との飲み合わせに注意が必要な植物です。
乾かして戸口に / 内服は要注意ローズマリー
記憶と守りの香り。頭がぼんやりする朝、判断が鈍っている日に。生の枝が手に入るなら、指でこすって香りを立て、そのまま胸のあたりで深く吸います。玄関先に植えると、家の守りになります。※妊娠中・授乳中の方や、てんかん等の持病をお持ちの方(神経系がデリケートな方)は、シネオールをお選びください。
朝に / 玄関先に植えるセージ
場を清める草。重い話をしたあと、来客のあとの部屋に。焚いたら窓を開けて、煙といっしょに空気を入れ替えてください。※神経系に働く精油です。妊娠中・授乳中の方や、てんかん等の持病をお持ちの方はお控えください。
来客のあと / 窓を開けてカレンデュラ
ミカエルの花とされる、太陽の色をした花。乾かした花びらを小さな器に入れて、日の当たる窓辺に置きます。見るたびに金の光を思い出すための、目印のようなものです。
窓辺に飾るフランキンセンス(乳香)
古くから聖なる場に焚かれてきた樹脂。祈りの時間を区切るために使います。始める前にひと粒。煙が細く立ちのぼるあいだが、祈りの時間です。
祈りの始まりに体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
緊急のとき、長い祈りを唱える余裕がありません。
名前だけでも届くので、「ミカエル」と呼んでください。人が本気でこわいと思った瞬間に、いちばん早く来る天使です。
コードカッティングをすると、その人と縁が切れてしまいますか。
切れるのは、恐れから生まれたつながりだけです。愛から生まれたものは残ります。実際、家族との関係でこれを行ったあとに、かえって穏やかに話せるようになったという声は多くあります。
自分ではなく、家族のために祈ってもよいですか。
よく届きます。ただ、その人の選ぶ道を変えてくださいとは願わないでください。守ってください、と伝えるだけで十分です。あとはその人と天使のあいだのことになります。
ひとりで抱えてきたものが、あなたにもあると思います。
その重みを、ミカエルは知っています。
名を呼んでみてください。その荷を一緒に持ってくれるでしょう。