名乗らないまま、隣を歩いてくれる天使。
気づいたら痛みが薄れている、
その静けさが、この天使の癒しです。
ラファエルは、癒しを司る天使です。名は「神は癒す」という意味を持ちます。
ヘブライ語で医者をあらわす言葉と、この天使の名は同じ根から生まれています。癒すという行いそのものが、名前になった天使です。
聖書に天使は数多く登場しますが、そのなかで自分から名を名乗った天使は、ラファエルだけです。『トビト記』の終わりで、長い旅を共にした若者に向かって、自分は神の前に仕える七人の天使のひとりであると告げます。それまでずっと、ただの旅の連れとして歩いていました。
癒すのは人だけではありません。動物も、傷ついた場所も、この天使の領分です。医療や介護に携わる人、人を癒す仕事をしている人も、ラファエルが見守っています。
ミカエルは前に立ち、カマエルはあなたを立たせ、
ラファエルは、隣に座ります。
古い町に、正しく生きてきたひとりの老人がいました。ある日、庭で休んでいるあいだに目を痛め、光を失います。手を尽くしても治らず、まわりからは疎まれ、ついには、もう死なせてほしいと祈るまでになりました。
同じころ、遠い町の娘もまた、深い苦しみのなかにいました。二人はたがいを知りません。けれど同じ日、同じ時に、それぞれが天に向かって嘆いていました。
遣わされたのがラファエルです。老人の息子が遠くへ旅立つとき、道連れとして現れました。人の姿をして、別の名を名乗って。旅のあいだ、若者はその連れが天使だとは知りません。川で獲れた魚の内臓を取っておくように教え、道中の危険から守り、その娘との縁を結び、やがて父の目を開く薬を作らせました。
すべてが終わったあとで、はじめて名を明かします。ずっとそばにいました、と。
この物語がラファエルという天使のすべてを語っています。癒しは、隣を歩く誰かとして、たまたま知った知恵として、川で獲れた一匹の魚として来ます。あとから振り返って、ああ、あれがそうだったのかと気づく。ラファエルのやり方です。
もうひとつ。魚から薬を作らせたことを覚えておいてください。この天使は、手に入るものを使って、実際に手当てをさせます。お医者にかかることも、薬を飲むことも、休むことも、すべてラファエルの領分です。祈りは、それに添えるものです。
ラファエルは、旅装の若者の姿で描かれます。手にしているものに、それぞれ意味があります。
旅人の杖
歩くための杖です。同じ道を、同じ速さで歩くための道具。だからラファエルは、旅する人の守り手でもあります。
魚
トビト記で薬の材料になった魚。癒しは、どこか遠くではなく、いま目の前の川にあるという教えです。
水の器
薬を入れる小さな壺、あるいは水の入った器。洗い流すこと、満たし直すことをあらわします。減ったものは、また注げばよいのです。
薬草
手に草を携えた姿でも描かれます。地面に生えているもので人を治す天使だという、はっきりしたしるしです。
水星は、伝達と移動と学びの星です。癒しの天使に当てるには、少し意外に思われるかもしれません。けれど、たどっていくと理由があります。
医療の杖は、もともと水星の杖でした
病院や薬局の看板に使われる、二匹の蛇が巻きついた杖。あれはもともと、ヘルメス——ローマではメルクリウス、つまり水星——が持っていた杖です。錬金術の中心にも水星が置かれ、薬をあつかう人たちは、その流れを汲む者として歩いてきました。薬草を扱うことは、はじめから水星の仕事でした。
癒しとは、流れが戻ることです
水星が司るのは、流れ、行き来、つなぎ直すことです。そして体も心も、悪くなるときはたいてい、どこかが止まっています。血が滞る、言葉が出ない、気持ちが同じところをぐるぐるする。
癒えるというのは、その止まっていたものがまた動き出すことです。そう考えると、癒しと水星はまったく同じことを指しています。
言葉もまた、薬です
水星は言葉の星でもあります。話せなかったことを話せたとき、人はよく眠れるようになります。診てもらうこと、相談すること、名前をつけてもらうこと。それだけで軽くなるものが確かにあります。ラファエルは、そこにも働いています。
ラファエルは、減ってしまったものを注ぎ直す天使です。急がず、静かに働きます。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。うまく言おうとしなくて大丈夫です。
自分のために
大切な人のために
旅立ちの朝に
伝えたあとは、手放します。
終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
ラファエルの光は、深い緑です。若葉の色、あるいはエメラルドの色。この光を使った、家でできる静かな手当てをお伝えします。
眠ってしまってもかまいません。むしろ、そのほうがよく効きます。
毎日でも、思い出したときだけでも。気が向いた日に、どうぞ。
人にしてあげるときは、相手に断ってから。触れられたくない日もあります。
人を癒す仕事をしている方へ。看護や介護に携わる方、施術をする方、話を聴く仕事をしている方、そして家族の世話をずっと続けている方へ。
ラファエルは、癒す側に立つ人を、同じだけ見ています。人に注ぎ続ける人は、自分が減っていることに気づきにくいものです。器がからになっても、まだ注ごうとしてしまう。
一日の終わりに、手を洗いながら唱えるのがよいと思います。
流れる水は、それだけで区切りになります。
人のものを持ち帰らないでいることが、長く続けるための作法です。
ラファエルの癒しは、人だけに限りません。動物もこの天使の領分です。
言葉を持たない相手は、どこが痛いのか伝えられません。こちらも、してあげられることが少なくて心細くなります。そういうときこそ、この天使を呼んでください。名前を伝えるだけで届きます。
その子に触れながら唱えると、より届きます。
眠っているときでもかまいません。むしろ、そのほうが受け取りやすいでしょう。
獣医さんに診てもらうことも、この祈りの一部です。
この天使のしるしは、やわらかく、見落としやすいものです。
緑の光がよぎる
視界の隅を、深い緑の閃きが通ることがあります。ラファエルの光の色です。まばたきで消えても、確かに来ています。
手のひらが温かくなる
何もしていないのに、手のひらがじんわり熱を持つことがあります。この天使がその手を通そうとしています。
急に強い眠気が来る
祈ったあと、抗えない眠気に襲われることがあります。手当てが始まった合図です。そのまま眠ってください。
必要な情報が向こうから来る
探していたわけでもない記事、人からの何気ない一言、たまたま開いた本。答えのほうから近づいてきます。
植物や緑が目に入る
その日ばかり、緑ばかりが視界に入る。あるいは急に草木に触れたくなる。呼ばれています。
生きものが近くに来る
鳥、蝶、猫。ふだんは寄ってこない生きものが、そばまで来ることがあります。この天使は生きものと近しいのです。
ラファエルは水星を司り、風のエレメントに属します。方角は東、夜明けの方角です。いずれも、流れるもの、通り抜けるもの、朝に向かうものに結びついています。
水曜の朝に
一週間のまんなかの日です。疲れが出はじめ、まだ終わりは見えない。この日は、体の声を一度だけ聞いてください。どこが張っているか、何が足りていないか。気づくだけで十分です。
東を向いて、窓を開ける
ラファエルと呼吸を合わせたいときは、東を向いて座ります。朝、東の窓を開けて、入ってくる空気をひと呼吸だけ深く吸ってください。風の天使ですから、風の通る部屋によく来ます。換気は、この天使への招き方です。
緑を一鉢、置く
部屋に生きた緑をひとつ置くと、ラファエルの居場所ができます。ミントでも、育てやすい観葉でも。世話をするという行為そのものが、癒しの練習になります。
双子座・乙女座に生まれた方へ
この二つの星座は水星に守られており、ラファエルと縁が深いと伝えられています。頭がよく回る代わりに、考えすぎて疲れやすい方たちです。眠る前に頭の中が止まらない夜、この天使の名を呼んでみてください。
ラファエルが立つのは、ホド。
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ラファエルに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
エメラルド
ラファエルの光そのものの色。小さなものでかまいません。緑の光の手当てのとき、胸の上に置きます。高価な石ですが、代わりにグリーンアベンチュリンでも同じように働きます。
手当てのとき胸の上にマラカイト
濃淡の縞が渦を巻く緑石。溜まったものを吸い出す働きがあるとされます。使ったあとは流水で洗い、日陰で休ませてください。
使用後は流水でグリーンアベンチュリン
やわらかい若葉色。もっとも使いやすく、疲れているときでも重く感じません。回復を待っている時期、枕元に置いておくとよいでしょう。
枕元に置くペリドット
黄緑の石。緑(癒し)と黄(水星の伝達)が一粒に入っています。この天使に一石選ぶなら、これがもっとも性格をあらわしています。話さなければならないことがある時期に。
緑と黄、この天使の色ジェイド(翡翠)
東洋で長く守り石とされてきた緑石。旅に出るとき身につけます。ラファエルは旅する人の天使でもあります。
旅のお守りにハーブと香り
ペパーミント
水星の草の代表です。頭が重い日、胃が疲れている日に。お茶にすれば体の内から、香りを立てれば部屋の空気から、どちらからでも働きます。日中に向く香りです。※妊娠中・授乳中の方や乳幼児、てんかん等の持病をお持ちの方はお控えください。(※胃腸がデリケートな時期もお茶の飲用は控えめが安心です)
日中のお茶にフェンネル
古くから目のための草とされてきました。トビト記の物語を思えば、この天使にふさわしい植物です。種を数粒、食後に噛むと口の中がすっきりします。
食後に種を数粒ラベンダー
休ませるための香り。眠れない夜、枕元にひと雫。あるいは乾かした花を小袋に入れて、枕の下へ。緑の光の手当てをするときに、そばに置いておくのもよいでしょう。
枕元に一滴 / 手当てのお供にカレンデュラ
肌をいたわる花として、長く手当てに使われてきました。乾かした花びらをそのまま器に飾ってもよいですし、浸出油にして手元に置いても。手当てをする人の花です。
手当てをする人の花マジョラム
張りつめたものをゆるめる草。肩や首がこわばる日、料理に加えるだけでもかまいません。あたたかく、丸い香りです。※眠くなる作用があるので、夜やリラックスタイムに。
こわばりのある日にローズマリー
頭をはっきりさせ、めぐりを助ける草。ラファエルの守りにも、ミカエルの守りにも数えられます。生の枝を指でこすって、その場で香りを立てるのがいちばん早い使い方です。※妊娠中・授乳中の方や、てんかん等の持病をお持ちの方(神経系がデリケートな方)は、シネオールをお選びください。
指でこすってその場で体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
祈ることで病気が治るのでしょうか?
トビト記でも、この天使は祈りだけで済ませず、手に入る材料で実際に薬を作らせました。診てもらうこと、薬を飲むこと、休むこと。それらすべてがラファエルの働きです。祈りは、そこに添えるものです。
緑の光がうまく思い浮かべられません。
見えなくてかまいません。色を思い浮かべる力は人によって違います。「いま緑の光が来ている」と言葉で置くだけで十分です。手のひらの温かさを感じるほうを頼りにしてください。
人に手当てをしてあげてもよいですか。
相手に断ってからにしてください。触れられたくない日もあります。終わったあとは自分の手を流水で洗い、受け取ってしまったものを流してください。癒す側が長く続けるための作法です。
いま、つらい時期を過ごしている方へ。
ラファエルは奇跡を起こさないかもしれません。
ただ、隣を歩き、支えになっています。
名乗らないまま、最後まで。