秘密を預かっている天使。
けれど、隠しておくためではありません。
渡してよい時が来るまで、持っていてくれます。
ラジエルの名は、「神の秘密」という意味を持ちます。秘密を預かる天使です。
この天使が立っている場所が、そのまま役目をあらわしています。神の玉座のまわりには帳が掛かっていると伝えられ、ラジエルはその内側に立っています。だから、そこで語られることをすべて聞いています。聞いて、書き留めています。
別の名も伝わっています。ガリツール。岩を開く者、あるいは岩を割って中を見せる者、という意味に読まれてきました。硬く閉じているものを開けて、中にあるものを見せる。ラジエルという天使の性質が、こちらの名にも出ています。
階級については、伝承がひとつに定まっていません。座天使の長とする説、智天使とする説、玉座の車輪を支える者たちの一員とする説。第二の天を治める君と呼ばれることもあります。位置が定まらないのは、この天使がもともと「内側」にいる存在だからかもしれません。
コクマーに立つ天使
カバラの生命の樹では、第二のセフィラ、コクマー(知恵)に立ちます。ここは閃きの器です。考えて出した答えではなく、降ってくるほうの知恵。形はまだなく、勢いだけがある場所です。
帳の内側で聞いたことを、まだ形になっていないまま抱えている。そういう天使だと思うと、この座がぴったり来ます。ラジエルが渡してくれるのは、整理された知識ではありません。整理される前の、生のままのものです。
ウリエルは、あなたの手もとを照らす天使。
ラジエルは、あなたがまだ見ていないほうの扉を、少し開けておく天使です。
ラジエルは、老いた賢者の姿で描かれることが多い天使です。大きな翼を持ち、手には書かれたものを携えています。派手さのない、静かな絵になります。
巻物と書物
聞いたことを書き留めるためのものです。ウリエルの巻物が「読む順番を知っている」しるしだとすれば、こちらは「まだ誰も読んでいない」ほうのしるしです。
帳(とばり)
玉座を囲む布です。ラジエルはこの内側にいます。隠すためのものであり、同時に、めくれば見えるということでもあります。境目に立つ天使のしるしです。
虹の光
この天使の光は、ひとつの色になりません。プリズムを通した光のように、すべての色が混ざって見えると伝えられています。ひとつの答えに絞らない天使の色です。
鍵
開けるためのものです。ただしこの天使は、こちらが手を伸ばすまで開けません。知りたいと思った人にだけ、鍵が渡されます。
ラジエルは、知りたいと思っている人のための天使です。困っているから助けて、ではなく、分かりたいから見せて、と願うときに近くに来ます。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。この天使に願うときは、「教えてください」より「見せてください」のほうが通ります。受け取る用意がある、という姿勢が要る天使です。
分かりたいときに
眠る前に
自分の役目を知りたいときに
伝えたあとは、手放します。この天使からの返事は、たいてい遅れて来ます。数日後、あるいは数か月後に、まったく別のことをしていて急に分かる。そういう届き方をします。
終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
この天使を語るとき、必ず出てくる書物があります。『ラジエルの書』です。物語がついています。
アダムに渡された
エデンを追われたアダムとエバは、外の世界で途方に暮れていました。ラジエルはそれを見て、憐れみました。そして自分の書を渡します。帰り道が分かるように、そして自分たちがどこから来たのかが分かるように、と。
書かれていたのは、こういうことです。天使たちのこと。星と惑星の運行。ヘブライ語二十二文字が持つ力。言葉の働き、思いの働き。守りの護符の作り方。この世界がどんな仕組みでできているか、という書物です。
奪われて、返された
ほかの天使たちは、これに動揺しました。人に渡してよいものではない、と。書はアダムの手から奪われ、海へ投げ込まれます。
ここからが、この物語のいちばん大事なところです。神はラジエルを罰しませんでした。かわりに、ラハブという海の天使に命じて書を拾い上げさせ、アダムとエバのもとへ返させたのです。
渡してよかったのだ、ということです。知ることは罪ではない。追われた者が、帰り道を知ろうとすることも。この一場面のために、ラジエルという天使はいるのだと思います。
その後、書はどこへ
伝承は、書のたどった道も伝えています。
中世以降、この名を冠した写本がヨーロッパ各地に現れます。ラテン語に訳されたものも残っていて、スペインの王の宮廷で作られました。いま手に取れる『ラジエルの書』は、そうした写本の系統です。もとの書そのものではありません。
けれど、それでかまわないのだと思います。この物語がずっと語られてきたということは、人が知りたがることを咎めなかった存在がいた、と信じ続けてきたということだからです。
二十二の文字
書に記されているとされるもののうち、いちばん深いのが文字の力です。ヘブライ語のアルファベットは二十二字。生命の樹の小径も、二十二本あります。文字のひとつひとつが、世界を組み立てる部品だという考え方です。
この天使に近づきたいときは、書くことをしてみてください。読むより、書くほうが届きます。手で文字をかたちにしているあいだ、ラジエルの領分に入っています。
この天使のしるしは、分かりにくいところに置かれます。すぐに気づける形では来ません。あとから振り返って、あれがそうだったと分かる種類のものです。
虹とプリズム
窓辺に散った光、水たまりの油の膜、思いがけない場所の虹。ひとつの光が分かれて見えたら、この天使の色です。
夢で教わる
やけに筋の通った夢を見る、夢の中で誰かに説明されている。ラジエルは眠っているあいだに来ることが多い天使です。
同じ本に何度も出会う
人にすすめられ、店で目に入り、また別の人が話題にする。三度重なったら、読むときが来ています。
急に全部つながる
ばらばらだった知識が、ある瞬間に一本の線になる。長く抱えていた問いほど、この形で解けます。
明け方に目が覚める
目覚ましより早く、決まった時刻に目が開く。何か言われた気がするのに思い出せない朝は、来ていた朝です。
書きたくなる
急にノートを開きたくなる、手が勝手に走る。思っていた以上のことが出てきたなら、ひとりで書いたのではありません。
ラジエルの座は、生命の樹の第二のセフィラ、コクマーです。訳せば知恵。右の柱のいちばん上で、与える力、広げる力の源にあたります。
曜日を持たない天使
七つの曜日を守っているのは、ミカエルからカシエルまでの七大天使です。コクマーに配されているのは惑星ではなく、黄道十二宮そのもの。星座の帯まるごとです。ですからラジエルは曜日の輪の外にいて、いつ呼びかけてもよい天使です。
十二の星座を、ひとつの帯として
ひとつの星座ではなく、十二すべてを合わせたものがこの座に置かれている。ここが面白いところです。ラジエルはどの星座にも属さず、どの星座の人にも同じように近い天使だということになります。生まれた日で守護が変わるという考え方の、外側にいる天使です。
呼びかけるなら、明け方
時刻の決まりはありませんが、夜明け前から明け方にかけてがよく通ります。眠りと目覚めのあいだ、まだ思考が固まっていない時間です。灰色か、白の蝋燭を一本。しつらえはそれだけで足ります。
ノートを一冊
この天使に向き合うなら、書くものを用意してください。分かったことを書くのではありません。分からないことを書くのです。問いだけを並べたページを作って、日付を入れておきます。しばらくして読み返すと、答えのほうから戻ってきていることがあります。
ラジエルが立つのは、コクマー。
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ラジエルに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
サファイア
ノアに渡ったときの書は、サファイアの板に刻まれていたと伝えられます。ラジエルにいちばん近い石です。小さな粒でかまいません。ノートのそばか、書きものをする机の左上に置いてください。硬い石なので扱いに気をつかわずにすみます。
机の左上に / 小粒で十分虹入り水晶(アイリスクォーツ)
内側の割れ目が光を分けて、虹が閉じ込められたように見える水晶です。この天使の光の見え方そのものです。角度を変えて虹を探しているあいだ、頭が静かになります。窓辺に置くと、晴れた日に部屋へ光を散らします。
窓辺に / 虹を探しながらエンジェルオーラクォーツ
水晶に金属を蒸着させた、淡い真珠色に光る石。人の手が加わった石ですが、そのぶん軽く穏やかに働きます。強い石が苦手な方はこちらから。研磨剤や強い洗剤で表面が傷むので、水で軽くすすぐだけにしてください。
強い石が苦手な方に / 洗剤は避けるファントムクォーツ
水晶の中に、以前の結晶の輪郭が山の形で残っている石。育つ途中がそのまま見えています。過去を辿りたいとき、家系や土地のことを調べているときに。手のひらに載せて、中の山を見つめてください。
過去を辿る日にハーブと香り
クラリセージ
見えないものを見せる草として、長く使われてきました。深く広がる香りで、瞑想の前にひと垂らし。※妊娠中の方、ホルモン系疾患をお持ちの方はお控えください。
瞑想の前にジュニパーベリー
場と頭を澄ませる実の香り。考えが濁っている日に、ディフューザーで薄く。枝を焚いて場を清める使い方も、ヨーロッパ各地に残っています。※腎に働く精油です。長期使用は控えましょう。
考えが濁った日にヨモギ(マグワート)
夢の草です。乾かした葉を小袋に入れて、枕の下へ。夢を覚えていたい時期にいちばんよく働きます。日本でどこにでも生えている草ですから、自分で摘んで乾かすのがよいでしょう。※飲むのは避けて、キク科アレルギーの方は控えてください。
枕の下にローレル(月桂樹)
神託の場で焚かれ、噛まれてきた葉です。予知と結びつけられてきた歴史が、どの土地にもあります。一枚を手のひらでこすって香りを立て、問いを心に置いてから、しばらく持っています。台所の月桂樹で十分です。※皮膚刺激が強いので、敏感肌、妊娠・授乳中、乳幼児は使用を控えましょう。
問いを立てる前に一枚体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
ラジエルの書は、現在読むことができますか。
この名を冠した写本が中世以降のヨーロッパに残り、ラテン語訳も作られました。翻刻されたものを手に取ることはできます。ただし、アダムに渡されたもとの書そのものではありません。何度も書き写され、書き足されてきた系統のものです。それでも、人が知ろうとすることを咎めなかった存在への記憶が、そこに残っています。
メタトロンやウリエルとの違いを教えてください。
ウリエルは、あなたの手もとを照らして自分で見つけられるようにする天使。メタトロンは、あなたのしたことを記して取り次ぐ天使。ラジエルは、まだ見ていない側の扉を少し開けておく天使です。同じ「知」に関わっていても、立つ位置が違います。
ずっと知りたかったことが、あると思います。
まだ答えが来ていないのは、受け取る時が来ていないだけです。
名を呼んでみてください。扉は、開かれていくでしょう。