暗がりに、火をひとつ持って立つ天使。
行き先を教えてはくれませんが、
次のひと足だけは、いつも照らしてくれます。
ウリエルは、光そのものを預かる天使です。名は「神は我が光」、あるいは「神の炎」という意味を持ちます。
四大天使の一柱に数えられます。ミカエル、ガブリエル、ラファエル、そしてウリエル。ただこの天使だけは、ほかの三柱にくらべて表に出てくることが少ない。理由があります。それは少しあとで書きます。
エチオピア語エノク書のなかで、ウリエルはエノクを天へ連れていき、案内役をつとめます。天の倉、風の部屋、大地の柱、星の落ちる場所。ふつうなら人が見ることのないものを、順に見せていきます。同じ書物でこの天使は、天のすべての発光体と、地上の運行、気象、自然現象を司るとされます。太陽と月の暦を人に教えたのも、ウリエルでした。
大洪水が近いことをノアに知らせに行ったのも、この天使です。ここは大事なところだと思います。来るものを、先に告げに来る天使です。
エデンの東の門に、炎の剣を持って立つ姿でも語られます。まだそこへ戻る時ではない、と知らせるために立っています。
名簿から消えても、光は消えない
七四五年、ローマで開かれた教会会議に、一枚の祈りの紙が持ち込まれました。アルデベルトという説教者が、自分のために作った祈りです。そこには八つの天使の名が並んでいました。ウリエル、ラグエル、トゥビエル──。会議はその紙を火にくべることを決め、名を呼んでよい天使はミカエル、ガブリエル、ラファエルの三柱に限る、と定めます。ウリエルの名は、西方の教会の公の一覧から外れました。
それでも、この名は消えませんでした。東方の教会では崇敬が続き、エチオピア正教会にはいまも祝日があります。西のヨーロッパでも、修道院の写本の隅に、暦の余白に、名を書き残した人がいました。人が名簿から名を消しても、光が消えるわけではありません。
ガブリエルが言葉を運ぶ天使なら、
ウリエルは、その言葉が降りてくる場所を照らす天使です。
ウリエルの絵には、火と、書かれたものが添えられます。持っているものを見れば、その天使が何をしに来たのかがわかります。ルネサンスの絵にも描かれていて、レオナルド・ダ・ヴィンチの《岩窟の聖母》で幼子ヨハネに寄り添う天使は、古くからウリエルとされてきました。
炎
松明のように高く掲げて立つ姿と、開いた手のひらに小さな火を載せた姿が、古くから伝えられています。どちらにしろ、この火は誰かに渡すためのものです。
巻物と本
解き明かす天使のしるしです。エズラの前に立ったときも、ウリエルは説き明かす役目を負っていました。答えはすでに書かれている、けれど読む順番がある。その順番を知っている天使です。
炎の剣
エデンの門に立つときの姿です。境目を示すための光。ここから先は、まだ、と告げるための一本です。
麦の束
北と地を守る姿では、麦の束を抱えて描かれます。衣の色は土と枯草の色。実りは、待った人のところにだけ来るということを、この束は静かに伝えています。
このほかに、星と星座を刻んだ円盤や、太陽の円盤を手にした姿もあります。暦を預かる天使だからです。持ちものが多いのは、それだけ役目が広いということでもあります。
ウリエルは、頭のなかが暗くなっているときの天使です。あなたが自分で見つけられるところまで、灯りを近づけてくれます。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。声に出しても、心の中でもかまいません。整った言葉でなくて大丈夫です。
先が見えないときに
学びと試験に向かうときに
胸が熱くなってしまったときに
眠る前に、四つの名を
ユダヤ教には、床につく前に四大天使の名を唱えるならわしがあります。就寝前のシェマと呼ばれる祈りの一部で、寝床の四方に天使を置く形をとります。ウリエルの座は、前です。
四方を囲んでもらう形なので、ひとりで眠る夜、心細い夜に向いています。子どもに唱えてあげるのも、古くからのならわしです。
伝えたあとは、手放します。答えはたいてい、考えるのをやめた瞬間に届きます。終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
古い書物に、ウリエルと人とのやりとりが残されています。第2エズラ書と呼ばれる文書です。この天使の性質がこれほどはっきり出ている場面は、ほかにありません。
神殿が焼かれたあとの荒れ地で、預言者エズラは問いました。なぜ正しい人が苦しみ、なぜ神に背いた者が栄えるのか。その問いに答えるために遣わされたのが、ウリエルでした。
最初のひとことは、少し厳しいものです。あなたの理解は、この世界のことにさえ及んでいない。それでいて、いと高き方の道を悟れると思うのですか。けれどウリエルは、そこで扉を閉めませんでした。三つの道と三つの問いを示すと言い、ひとつでも解けたら、あなたが見たがっている道を見せよう、と持ちかけます。
エズラは答えます。生まれた者のうち、誰がそんなことをできるでしょう。ウリエルは言いました。わたしが尋ねたのは、火と風と、きのうのことだけです。あなたが生まれたときからそばにあって、ずっと経験してきたものばかりです。それでも答えられない。まして、見たこともないものを、どうして測れるでしょう。
エズラは地に伏して、生まれてこなければよかったと言います。それでもウリエルは責めませんでした。森と海のたとえ話をはじめ、しばらくして、こう告げます。いと高き方より先を、急いではいけません。
突き放しているように読めるかもしれません。けれど、そうではないと思います。これは「わからないままでいい」と告げる言葉です。人が抱えきれない問いを、抱えきれないままにしておいてよいと、この天使は言っています。
ウリエルは、答えを探している人のかたわらに、火をひとつ置いていく天使です。だから呼びかけるときは、「教えてください」より「照らしてください」のほうが、よく届きます。
ウリエルはいつも、あなたが力を抜いた瞬間を選んでしるしを置いていきます。
ふいに答えが降りてくる
お風呂の中、歩いている途中、眠りに落ちる直前。机を離れた瞬間に、探していた一行が浮かぶ。ウリエルのいちばん多いしるしです。
琥珀色の光
夕暮れどき、部屋が金色に染まる数分間。その光の中で急に静かな気持ちになったなら、この天使が通っています。
開いたページの一行
なんとなく開いた本、目に入った看板、流れてきた文章。まるで自分に宛てて書かれたような一行に出会う。解き明かす天使の得意な伝え方です。
空が変わる
遠い雷鳴、急に変わる風、天気の変わりめ。気象と自然現象を司る天使ですから、空の動きはこの天使の言葉のようなものです。
炎がゆれる
風のない部屋で、ろうそくの火がふっとゆれる。祈っている最中なら、聞き届けられたしるしです。
足の裏が地についた感じ
浮ついていた気持ちが、理由もなくすとんと落ち着く。地のエレメントを司る天使の、いちばん静かな働きです。
ウリエルの方角は北、エレメントは地、季節は冬です。西洋の魔術結社が伝えてきた四方の祈りでも、東を向いて立つ人の左手、つまり北にウリエルを置きます。そこに思い描くのは、土と枯草の色をまとった、暗い大地の天使の姿です。いずれも、いちばん静かで、いちばん動きが少ない場所を指しています。何も起きていないように見える場所にこそ、根が張られていくからです。
曜日を持たない天使
七つの曜日を守っているのは、ミカエルからカシエルまでの七大天使です。ウリエルは曜日ではなく、方角と季節に結びつく天使です。裏を返せば、いつ呼びかけてもよい天使ということでもあります。
北の窓辺と、夜明け前
ウリエルと呼吸を合わせたいときは、北を向いて座ります。時間は夜明け前がいちばんよいと伝えられています。まだ空が白む前、世界がいちばん暗くなる時刻です。その暗さの中で灯りを一本つけると、この天使の気配がわかりやすくなります。
キャンドルを一本
しつらえは、ろうそく一本で足ります。北向きに置いて、火をつけたら何も言わずにしばらく眺めてください。言葉はあとで大丈夫です。火を見ているあいだに、考えていたことが自然に整理されていきます。消すときは吹き消さず、蓋やスナッファーでそっと閉じると、余韻が長く残ります。
星の暦を預かる天使
エノク書のウリエルは、太陽と月と星が、どの順でどこを通るかをすべて把握しています。決まった通りに世界が動いていることを、いちばんよく知っている天使です。焦っている日にこの天使を思い出すと、あわてなくていい、と言われている気がします。順番は決まっていて、あなたの番も来ます。
冬と、冬至と
冬はウリエルの季節です。何も咲かず、何も実らない時期に、この天使は近くにいます。とくに冬至の夜。一年でいちばん夜が長い日に、来年ほんとうに知りたいことをひとつだけ書いておくとよいと伝えられています。願いではなく、問いを書くのがウリエル流です。
ウリエルは、曜日にも生命の樹の座にも属さない天使です。
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ウリエルに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
琥珀(アンバー)
樹脂が長い時間をかけて固まったもので、厳密には鉱物ではありません。手のひらで温めると、かすかに松のような香りが立ちます。考えすぎて眠れない夜に握ってください。やわらかく傷つきやすい石なので、塩も水も直射日光も避けて、香でととのえます。
眠れない夜に握る / 塩と水は避けるシトリン
黄色い水晶。気持ちが暗いほうへ傾いた日に、机の上へ置きます。書きもの、勉強、帳簿のような「頭を使う場所」と相性のよい石です。長く強い日ざしに当てると色が褪せるので、浄化は月光か流水で短めに。
机の上に / 直射日光は短くタイガーアイ
光の帯が動いて見える石。迷いを断ちたい日、断らなければならない日にポケットへ入れます。優柔不断が続くときは、右手に握って「決めます」とひとこと言ってから決めると、後悔が残りにくくなります。
決断の日にポケットへルチルクォーツ
水晶の中に金色の針が走る石。光の筋がそのまま閉じ込められたような姿で、ウリエルの気配にいちばん近く見えます。考えが渋滞しているときは机の左上に。琥珀やシトリンと並べて置くのもよい組み合わせです。
机の左上に / 他の石と並べるハーブと香り
フランキンセンス(乳香)
ウリエルにもっとも近い香りです。焚くと呼吸が自然に深くなり、胸のあたりがひらきます。祈りの前にひと焚き、あるいはティッシュに一滴落として枕元へ。考えごとが多い日ほど、量は少なめのほうがよく効きます。
祈りの前に / 量は少なめローズマリー
記憶と集中の草。学ぶ机のそばに、生の枝を一本挿しておくだけでも変わります。精油を使うならディフューザーで薄く。※妊娠中・授乳中の方や、てんかん等の持病をお持ちの方(神経系がデリケートな方)は、シネオールをお選びください。
学ぶ机に一枝 / 精油はシネオールをジンジャー
冷えて動けない朝に。体の芯をあたため、止まっていたものを動かします。すりおろした生姜を白湯に落とすだけでも、じゅうぶん同じ働きをします。※精油は皮膚への刺激が強いので、肌につけるならごく薄く。
冬の朝に / 肌には薄くベチバー
土の匂いのする根の香り。不安で気持ちが浮ついてしまう夜、うんと薄めて足の裏に塗ります。地のエレメントの香りですから、上へ上へと行きすぎた意識を、静かに下ろしてくれます。
浮ついた夜に / 薄めて足裏へ体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
ウリエルが天使の一覧に入っていないことがあるのはなぜですか。
七四五年のローマの教会会議で、名を呼んでよい天使がミカエル・ガブリエル・ラファエルの三柱に限られたためです。アルデベルトという説教者が八柱の天使の名を唱える祈りを使っていたことが、きっかけでした。ただし東方の教会では崇敬が続き、エチオピア正教会にはいまも祝日があります。名が外れたのは、西方の教会の一覧からです。
嵐や地震を司る天使だと読みました。災いの天使なのでしょうか。
エノク書では、気象や自然現象を司る天使とされています。ノアのところへ行って、洪水が来ると先に告げたのがこの天使です。ウリエルの役目は、起こすことではなく、知らせること。備える時間をくれる天使だと受け取ってください。
試験や勉強のときに呼んでもよいですか。
ウリエルがいちばん近くにいてくれる場面のひとつです。積み重ねたものを必要なときに取り出せるように、頭を静かにしてくれます。机にシトリンかルチルクォーツを置いて、ローズマリーを一枝そばに。
答えが出ないまま、長く抱えているものがありませんか。
すぐに結果がでなくても大丈夫です。
名を呼んでみてください。
手もとから、少しづつ、明かりが射しはじめます。