足は地についたまま、頭が天に届いている天使。
あなたの祈りは、この天使が拾っていきます。
言葉にならなかったものも、いっしょに。
サンダルフォンは、人の祈りを天へ運ぶ天使です。メタトロンと同じく、もとは人だったと伝えられています。
この天使の名にも、「エル」がつきません。ギリシャ語で「共なる兄弟」を意味する語から来たという説があり、その兄弟とはメタトロンのことだとされます。もうひとつ、「サンダルを履いた者」という読みも古くから伝わってきました。天使でありながら履物の名で呼ばれる。地面を歩く者だということです。
火の戦車に乗った人
人だったころの名は、預言者エリヤ。列王記に、その最後が書かれています。弟子のエリシャと歩いていると、火の戦車と火の馬が現れて二人を隔て、エリヤはつむじ風に乗って天へ上っていった、と。ここでも、亡くなったとは書かれていません。
エノクとエリヤ。死を経ずに天へ行った二人が、天使になってメタトロンとサンダルフォンになった。古い伝承は、そう伝えています。契約の箱の上に向かい合っていた二体の金のケルビムは、この二柱だったという話も残っています。
エリヤという人は、いまも消えていません。ユダヤの家では、過越の食卓にエリヤのための杯を置き、扉を開けて待ちます。割礼の儀式には、エリヤの椅子が用意されます。困っている人のところへ、姿を変えて現れる。そういう物語が何千と語り継がれてきました。天使になっても、この天使は人のいるところへ来る性質を持っています。
背の高さのこと
バビロニア・タルムードに、サンダルフォンの背の高さについての一節があります。足は地についていて、頭は天の生きものたちのあいだに届いている。ほかの天使より、五百年歩いてやっと着く分だけ高い、と。
数として読むと途方もない話です。けれど、この背丈が言おうとしていることは、はっきりしています。この天使は、天へ行くために地を離れたりしません。足をつけたまま届いている。だから、あなたが立っている場所と、祈りが届く場所は、別々ではないということです。
カバラの生命の樹では、いちばん下のセフィラ、マルクト(王国)に立ちます。メタトロンがいちばん上のケテルですから、この二柱で樹の上と下が押さえられていることになります。
メタトロンは、いちばん高いところから見ている天使。
サンダルフォンは、あなたの足もとから見上げている天使です。
サンダルフォンの持ちものは、どれも軽いものです。武器はありません。運ぶための天使だからです。
オリーブの枝
平和のしるしです。洪水のあと、水が引いたことを知らせたのもオリーブの葉でした。争いを止める力ではなく、もう終わったと告げる力。この天使の穏やかさは、そこから来ています。
竪琴と歌
天の歌の長とされ、天使たちの合唱を導く役目を負っています。楽器を手にした姿で描かれるのはそのためです。音楽をする人を見ている天使でもあります。
サンダル
名前そのものに残った、履物のしるし。天使に履物が要るのかと思いますが、要るのです。この天使は歩きます。地面の上を、人と同じように。
編まれた冠
集めた祈りを編んでこしらえる冠です。花輪のような形をしています。次の章に、その伝承をくわしく書きました。
色はターコイズ。海と空のあいだのような、青と緑の混じった色です。土の色、草の色といっしょに語られることもあります。どれも自然の中にある色です。
サンダルフォンは、天と地のあいだが遠く感じられるときの天使です。届いていないのではないかという不安に、いちばんよく応えてくれます。
名を三度呼んでから、静かに伝えます。この天使は運ぶ役目なので、整った言葉である必要がまったくありません。うまく言えない部分は、そのまま渡して大丈夫です。
届いているか不安なときに
遠くの人のために
地に足をつけたいときに
言葉のかわりに、歌でも
この天使には、歌が届きます。旋律のあるものなら何でもかまいません。知っている歌をひとつ、小さな声で歌う。それがそのまま祈りになります。声に自信がなくても大丈夫です。この天使が聴いているのは、うまさではありません。
伝えたあとは、手放します。あとはこの天使が運んでくれます。
終わりに「ありがとうございました」とひとこと添えると、心がきれいに閉じます。
サンダルフォンの伝承のなかで、いちばん美しいものをここに書きます。
仮庵の祭りの祈祷文に、こう残されています。この天使は人々の祈りを集め、それを編んで花輪のような冠にこしらえ、天のいちばん高いところへ昇らせる、と。
ひとつずつ運ぶのではありません。編むのです。ここが大事なところだと思います。
祈りが下手だと思っている人は多いものです。何を言えばいいのか分からない、途中で言葉が続かない、こんな願いを言っていいのだろうか。けれどこの伝承を読むと、そういう心配がいらないことが分かります。編む人が、ちゃんといるからです。
音として運ぶ
サンダルフォンは天の歌をつかさどる長とも呼ばれます。祈りが音として運ばれるという考え方が、この天使には一貫してあります。角笛の音が新しい年を開くのも、この天使の領分だと言われてきました。
だから、祈るときに音を添えるとよく届きます。鈴をひとつ鳴らす、鉢を打つ、歌をうたう、あるいはただ深く息を吐く。音が立ちのぼるあいだが、そのまま祈りの時間になります。
やり方
窓を少し開けて、外の空気が入るようにします。裸足になれるなら、なってください。立ったままでも座ってでもかまいません。名を三度呼んで、今日のことを話します。願いでも、報告でも、愚痴でもかまいません。話し終えたら、音をひとつ鳴らして終わります。鳴らすものがなければ、手をひとつ打ってください。
集めた祈りは、その日のうちに運ばれると伝えられています。
答えがすぐに来なくても、届いていないわけではありません。編むのに、少し時間がかかることもあります。
この天使のしるしは、音と、自然の中に置かれます。派手なものはひとつもありません。
歌がぴったり流れる
店で、車で、たまたまかけた曲で。いま思っていたことをそのまま言い当てる歌詞に出会う。サンダルフォンのいちばん多いしるしです。
ターコイズ色が目につく
青と緑のあいだの色。空でも水でも、誰かの服でもかまいません。その色に目が留まったなら、そばにいます。
鳥の声が届く
気づいていなかった鳴き声が、急に耳に入ってくることがあります。音を使う天使ですから、鳥はよく使われます。
植物のほうから来る
思いがけず花が咲く、枯れかけていた鉢が持ち直す、道端の草が気になる。地の天使は、植物を通して合図します。
足の裏があたたかい
立っているとき、足の裏がじんわり温かくなる。浮いていた気持ちが降りてきたしるしです。
雨が止む、風が変わる
祈り終えた直後に、外の様子が変わることがあります。受け取りましたという返事の形のひとつです。
サンダルフォンの座は、生命の樹のいちばん下、マルクトです。王国という意味で、天体は地球。いま足の裏が触れている、この世界そのものです。
樹のいちばん下ですが、価値がいちばん低いということではありません。上のすべての光は、ここへ届くために降りてきました。届いた先がここなのですから、ここが目的地です。
曜日を持たない天使
七つの曜日を守っているのは、ミカエルからカシエルまでの七大天使です。それぞれに惑星があり、セフィラがあります。マルクトに配されているのは惑星ではなく、地球そのもの。ですからサンダルフォンは曜日の輪の外にいて、いつ呼びかけてもよい天使です。
土に触れる日に
この天使に近づくのに、特別なしつらえは要りません。土に触れること。それだけです。庭に出る、鉢の植え替えをする、公園で靴を脱いで芝生に立つ。手か足のどちらかが土に触れているあいだ、サンダルフォンはとても近くにいます。
暮らしそのものが祈りになる座
マルクトの祈りは、目を閉じて唱えるものだけではありません。手を動かすこと、掃除すること、食べること。ひとつずつ丁寧にやっていくと、それが祈りになります。暮らしがただの雑事に見えてしまう時期は、この座から光が抜けているときです。
アダルの月
ユダヤ暦のアダルの月を、この天使が守るとされます。冬の終わりから春へ向かう時期で、暗い季節がいちばん最後に踏ん張るところです。凍っていた土がゆるみはじめる頃だと思ってください。
サンダルフォンが立つのは、いちばん下のマルクト。
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サンダルフォンに寄り添う石と香りです。手元にあるものから、ひとつ選んでみてください。
石
ターコイズ
サンダルフォンにもっとも近い石です。旅の守りとして、どの土地でも使われてきました。喉のあたりに来るように、短めのネックレスにするのが向いています。人前で歌う日、話す日に。汗、化粧品、日光に弱い石なので、外したら乾いた布で拭いてください。
喉のそばに / 汗と日光を避けるフルグライト(雷管石)
砂に雷が落ちて、その熱で溶けて固まったもの。天が地に触れた瞬間が、そのまま形になっています。細い管になっていて、祈りの筒と呼ばれてきました。願いを声に出しながら、そっと息を吹き込む使い方があります。とても脆いので、やさしく扱ってください。
祈りの筒として / 壊れやすいアマゾナイト
やわらかい青緑の石。言えずに飲み込んでしまう人のための石です。話さなければならない日、机の上か胸ポケットへ。強く主張させる石ではなく、言葉のとげを取ってくれる石だと思ってください。
言いにくい話をする日にモスアゲート(苔瑪瑙)
中に苔のような模様が入った石。庭仕事と相性のよい石として古くから伝わり、土に埋めておく使い方もあります。植物を育てている方は、鉢のそばに置いてください。何も起きていないように見える時期を、支えてくれる石です。
鉢のそばに / 土に埋めてもハーブと香り
サンダルウッド(白檀)
祈りの場で、どの土地でも焚かれてきた香りです。静かに、長く残ります。祈る前ではなく、祈っているあいだじゅう漂わせておくのがよいでしょう。香木でも精油でもかまいません。資源が減っている木なので、少量を大切に使ってください。
祈りのあいだ焚く / 少量でパチュリ
湿った土の匂いのする葉。浮ついた気持ちを、いちばん早く地面に戻します。好き嫌いの分かれる香りなので、一滴から試してください。時間がたつほどまろやかになる、めずらしい精油です。※強い香りなので、量は控えめに。女性ホルモンに働きかける精油です。妊娠中・授乳中の方や、お体がデリケートな時期・女性特有のお悩みをお持ちの方はお控えください。
まず一滴からスパイクナード(ナルド)
足に注がれた香りとして、古い書物に残っています。この天使にこれ以上ふさわしい香りはありません。深く沈む土の香りで、眠れない夜に向いています。植物油でうんと薄めて、足首から下に塗ってください。※ホルモンに働く精油です。妊娠中・授乳中の方や、お体がデリケートな時期は、お控えください。
眠れない夜に / 足に薄くゼラニウム
葉から採れる、青みのある花の香り。上と下、心と体のあいだを取り持ちます。気分の波が大きい時期に、ディフューザーで薄く。窓辺で育てるのも古くからの使い方で、生きた株がそばにあるほうがよく働きます。※ホルモンに働く精油です。妊娠中・授乳中の方や、お体がデリケートな時期は、葉の香りを強く楽しんだり、お茶として飲むことはお控えください。
気分の波がある時期に / 窓辺で育てる体調や持病のことでお使いに迷われたら、専門の方にご相談のうえお楽しみください。
会えない人のために祈って、意味がありますか?
あります。運ぶ天使ですから、距離は関係ありません。ただ、その人の選ぶ道を変えてくださいとは願わないでください。守ってください、と伝えるだけで十分です。あとはその人と天使のあいだのことになります。
届いていないと思っている祈りが、ありませんか。
それらも、あますことなく、編みこまれています。
名を呼んでみてください。その祈りは、必ず届いているでしょう。